緑内障治療について 

 みなさん、こんにちは、眼科学教室教授の稲谷 大(いなたにまさる)です。

 僕の専門分野である緑内障の治療について、わかりやすくご紹介します。僕が緑内障を専門に診療するようになったのは、眼科マイクロサージェリーの父とされる故永田誠先生が部長をされておられた天理よろづ相談所病院で研修をされた谷原秀信先生(現熊本大学教授)にご指導いただいたことがきっかけです。谷原先生の専門である緑内障の手術治療の考え方を教わりながら、全国の緑内障治療で有名な先輩方とも交流を深め、緑内障の手術治療の経験を積みました。

 僕はこれまで緑内障の手術を多数執刀し、この手術成績を明らかにし、学会で発表してきました。この結果は、アメリカの眼科一流雑誌に多数掲載され、信頼性の高いデータとして評価されています。

 緑内障は、まず、目薬で眼圧を下げる治療をおこない、それでも充分に眼圧が下がらず、視野欠損が進行していく場合に手術治療をおこないます。しかし、緑内障はじわじわと視野欠損が進行していくので、いつ手術を決断すべきか、タイミングの見極めが非常に難しいです。そこで、そのタイミングを見極めるために、自動視野計と光干渉断層装置で進行を判定します。

 最近では、緑内障手術のバリエーションも増えてきました。早期の緑内障にはMIGSと呼ばれる低侵襲緑内障手術を選択し、進行した緑内障には、トラベクレクトミーと呼ばれる緑内障手術を選択します。

 教室の高村准教授が専門とする糖尿病網膜症は、難治性の緑内障を合併します。これは、血管新生緑内障とよばれる緑内障で、手術時に出血しやすく合併症の多い緑内障です。僕は、抗VEGF抗体ベバシズマブを手術の前に注射することで、手術時に出血するリスクを大幅に減らせることを明らかにしました。

 緑内障は日本人の失明原因のトップを占める病気であり、残念ながら、トラベクレクトミーが効かない場合もあります。このような難治性の緑内障には、インプラントを用いたチューブシャント手術を行います。また、2012年からは、難治性の緑内障に対してインプラントを用いたチューブシャント手術が我が国でも認可されました。福井大学では、いち早くチューブシャント手術がおこなえる施設としての準備を進め、これまでの手術では眼圧が下がらなかった症例に優先的にチューブシャント手術をおこなっています。福井県だけでなく近隣の県の難治性緑内障の患者さんの治療を紹介していただける基幹病院としての役割を福井大学の緑内障専門外来は目指しています。