研修医教育(専修医)ガイドライン 



 眼科専門医になるには、研修の最初の2年のうち1年間を日本眼科学会より承認を受けた「眼科研修プログラム施行施設:基幹研修施設」で研修することが必要になります。
http://www.nichigan.or.jp/member/senmon/kenshu.jsp

当教室は【眼科研修プログラム施行施設】として、次に述べる研修プログラムを実施しています。
2年間の研修後は関連病院に赴任し、白内障をはじめとする様々な手術技術を獲得するとともに、日常診療から高度な医療まで担うことのできる優れた眼科医を育成しています。

 

研修プログラム概要


 眼科研修医が、第一に眼科診療技術に関する土台作りをすること、第二に眼科に関する基礎知識を習得すること、第三に「プロフェッショナルに目覚めた眼科医師」となること、を眼科研修プログラムの目標とする。この三項目は優れた眼科医の養成には必須のものであると考えている。
 具体的には、眼科診療技術の習得について、オーベン医師と共にカンファレンス、病棟業務・外来業務・手術業務などを通して、業務項目毎に指導を行う。学会地方会での演題発表、論文等の作成は後期研修医とオーベン医師との共通のゴールとする。
 後期研修医がより高度に、よりプロフェッショナルに研修することを奨励する。医局の研修方針としては医局員全員が眼科研修医の育成を支援していく体制をとる。概要は以下の通りである。

 

研修医への全体的な指導体制


 研修開始後の約2ヵ月間は、医局内にて眼科の基本検査、診察手順、眼科関連薬剤、高頻度の疾患、手術手技の概要を理解するための集中講義をとり行い、全体の眼科診療の概要を理解する。
 角結膜、緑内障、網膜硝子体、白内障に関してはセミナー又はカンファレンスで、週一回、基礎知識から眼科診療の最新トピックまでを習得する。また、学会地方会発表および臨床研究、論文作成の修練を同時に積んでいく。
 後期研修医はオーベン医師を中心にマンツーマン指導を受けるが、外来業務については各外来担当医師と一ヶ月間外来診療を共に行う組み合わせとし、各医師に指導を受ける。外来診療以外に関しても、担当医師スタッフに毎日、面談、もしくは電話とメールで質問し、担当医師スタッフは翌日までに回答する。
一ヶ月毎に組み合わせを入れ替えることにより、研修分野に偏りがないように配慮する。
 知識、技術の習得を教えるのみ以外に、研修医らに対して患者様に穏やかな心で接し、優れた技術を提供することの重要さも学んでもらう。

 

 

専門プログラムの到達目標について

 

[ 総 論 ]
目標:角結膜疾患を急性、慢性、感染性、非感染性疾患に分けて理解して診断し、急性、感染性の疾患に的確に対処できることを目標とする。
主な対象疾患:外傷性疾患(熱・化学外傷、角膜びらん、角膜穿孔の初期の対応)、感染性疾患(アデノウイルス性角結膜炎、ヘルペス性角膜炎、細菌性角膜炎、角膜真菌症、アカントアメーバ角膜炎)、基本的な角結膜疾患(円錐角膜、周辺部角膜潰瘍、各種角膜ジストロフィー、角膜変性症、薬剤性角結膜障害、アレルギー性結膜炎、ドライアイ)など

[ 各 論 ]
(1)角結膜各種検査法を理解する。
細隙灯検査で、直接法、間接法、徹照法、フルオレセイン染色の所見のとり方を病態と関連付けて施行できる。
眼脂の塗抹鏡検査、角膜形状解析、角膜厚測定、前眼部写真撮影、内皮スペキュラー検査、涙液検査(BUT、シルマー、マイボーム腺検査、自己抗体検査)、アレルギー検査を施行する。

(2)感染性疾患について理解する。
サンプル採取法や、菌同定のプロセス(塗抹・鏡検、培養、PCR)を理解する。
細菌、真菌、ウイルス性疾患の鑑別ができる。
抗菌薬の選択ができる。

(3)基本的な角結膜疾患(円錐角膜、周辺部角膜潰瘍、アレルギー性結膜炎、ドライアイ)の病態を理解する。
角膜疾患を診断し、的確な対応ができる。
抗アレルギー薬の選択やステロイド剤の選択ができる。
ドライアイ治療の選択(点眼治療、涙点プラグ)ができる。
ドライアイの症状の原因を把握できる。

 

[ 総 論 ]
目標:眼の解剖学的および生理学的知識に基づいて、原発緑内障と続発緑内障の概念を理解し、診断と治療ができることを目標とする。

[ 各 論 ]
(1)緑内障診断に必要な検査とその目的を理解し、原因による分類、隅角形状による分類、進行度による分類ができる。
○細隙灯顕微鏡にて前房深度を評価できる。
○ゴールドマン圧平眼圧計による眼圧測定ができる。
○隅角鏡による隅角検査ができる。
○眼底検査にて視神経乳頭と網膜神経線維層を評価できる。
○視野検査として静的視野とゴールドマン視野計の使用法を理解し、眼底病変と対応させる。

(2)手術前後の検査・診察、手術助手ができる。
○緑内障手術の術式手順、術中合併症を理解する。
○各術式別に術前・術後検査のポイント(前房深度、濾過胞の状態、眼圧)を理解する。
○術後合併症を理解し、眼球マッサージや圧迫眼帯、レーザー切糸術をはじめとする緑内障術後管理ができる。

(3)緑内障治療プランを立てる。
○症例ごとに視神経乳頭と視野障害程度ならびに無治療時眼圧から治療の目標眼圧を設定する。
○薬物療法を開始し、効果を判定する。

 

[ 総 論 ]
目標:白内障による症状の把握および視機能異常について理解し、白内障の診断と治療ができることを目標とする。視機能異常に関しては、視力低下、屈折異常等について問診から白内障が原因であることが推測できる能力をつけることを目標とする。

[ 各 論 ]
(1)白内障発症の理解と特徴とする合併疾患について理解する。
○白内障の診断および症状を理解する。
○細隙灯顕微鏡検査での白内障の程度分類できる。
○皮質白内障、核白内障、成熟白内障などの形態的特徴を分類できる。

(2)白内障手術の適応および方法について理解する。
○眼内レンズ度数決定法と眼軸長測定法の原理と実際に習熟する。
○白内障手術については超音波乳化吸引術、白内障嚢外摘出術、嚢内摘出術について理解する。眼内レンズの選択および挿入法について理解する。

(3)白内障術後管理について理解する。
○術後早期、晩期合併症を理解する。
○白内障手術合併症に対する治療対処法や長期経過での後発白内障などに対する対処法について理解する。

 

[ 総 論 ]
目標:網膜硝子体疾患の病態を理解して診断し、的確に対処・治療できること、および蛍光眼底造影や光干渉断層計の画像診断技術を習得することを目標とする。
主な対象疾患:主要網膜硝子体疾患(糖尿病網膜症、裂孔原性網膜剥離、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、黄斑上膜、黄斑円孔、網膜動脈閉塞症など)

[ 各 論 ]
(1)網膜硝子体疾患、ぶどう膜炎疾患の診断に必要な検査を理解し、施行できる。
○細隙灯検査で、角膜、前房、虹彩、水晶体、前部硝子体の観察、前置レンズや双眼倒像鏡を用いて、黄斑部および眼底全域の観察ができる。
○主要網膜硝子体疾患の病態生理および眼所見を理解する。
○網膜硝子体疾患の診断に必要な各種検査(フルオレセイン造影検査、インドシアニングリーン造影検査、光干渉断層計、各種全身検査など)を理解して行うことができる。

(2)網膜硝子体疾患の各種検査を評価でき鑑別診断を行うことができる。
○検眼鏡にて各疾患に特徴的な異常所見をとることができ、確定診断に必要な検査を施行することができる。
○超音波検査ができ、結果の評価ができる。
○蛍光眼底造影や光干渉断層計の画像を読み、検眼鏡的所見と併せて、網膜前・網膜内・網膜下・網膜色素上皮下病変の鑑別ができる。

(3)網膜光凝固術の適応を判断し、施行することができる。
○レーザーの種類や波長特性等、網膜光凝固術の原理を理解する。
○網膜光凝固術の適応決定ができる。
○網膜光凝固術を施行できる。

(4)網膜硝子体疾患に対する薬物治療について理解する。
○網膜硝子体疾患に対する薬物治療の適応を判断できる。
○ステロイド、抗血管新生薬の作用機序を理解し、適応決定ができる。

(5)網膜硝子体手術の手術適応の判断、手術助手、術後管理ができる。
○網膜硝子体手術のセッティングができる。
○網膜硝子体手術の術式手順を理解し、手術助手ができる。
○術前および術後管理(術後併発症の診断と対応)ができる。